屏風の端から端にかけて、ゆるやかな起伏の土手の間に流れる川を描いた景色。平安時代(794年-1185年)から描かれている“名所”である。水に浮かぶ車輪、漁に使う梁(やな)、銀色を帯びた川の流れから宇治川であることがわかる。川に流されてくる扇面は、次々とやってくる流れのリズムを刻んでいるようであり、その鮮やかで不透明な色彩は、酸化した銀粉によって色調のトーンを抑えた水流とコントラストを描く。詩的な構成と自由な装飾は平安時代の文学的情緒をほのめかすものである。このようなテーマの結びつきは珍しく、この屏風を特徴づけるものである。金箔地に広がる絢爛豪華さに特色がある絵画は、桃山時代から江戸時代初期にかけて見られる。
 このような屏風は、日本画の形態として16世紀から多く見られるようになった。伝統的には偶数枚で構成され、部屋の間仕切りとして使われたが、そこに描かれた絵画は当時の美的真髄を示すものである。
 シンプルな構図と扇面に描かれた繊細な絵とのコントラストは、江戸時代に見られる革新的な表現を告げるものであり、この作品の年代の決め手となるものである。すなわちこの様式は1620年-1640年に絶頂期を迎えた宗達の画風にすぐ続くものであるようである。この作品は懐古的であると同時に革新的なものであり、その活力ある作風によって、文学的郷愁の表現にとどまらない。作品自身のなかに17世紀と18世紀の近代性を持つものである。